吉備路文学館
朝のうちは雨だったけれど、岡山に着いたら晴れ上がった。
吉備路文学館まで、時実新子の展示会を見に言ってきた。ご一緒させていただいたのは、川柳の先輩の皆様。電車の中はわいわいとにぎやかなおばさまだちだったのに、展示室では、静かに心ので中で新子と語り、涙して……。新子先生は愛されているな、と実感。
文学館の2階は常設展示。内田百閒や横溝正史を期待していたけれど、展示がなくて残念。吉行淳之介とか妹尾アキ夫があった。
千葉禎介

横手といえば、この写真集。「千葉禎介」。昭和20年~30年代の風景。
モノクロ写真なのに、青空が伝わってくる雪景色。市場の花売りの小菊は、わたしの頭の中で濃紫と赤紫になる。言葉にならない多くの言葉があふれてくる。
青い山脈
朝日新聞土曜版「うたの旅人」に「青い山脈」が掲載された。舞台は横手市で、石坂洋次郎やむのたけじも出てくる。わが故郷。うれしくて、家族に教えたのだが、「読んだよ」と、冷静な返事。
夫や子どもにとって、横手は年に1回行く町。彼らは、コンパクトな町をコンパクトなプロフィールで知っている。なので、わたし以上に、羽後の歴史や町のおかれている背景をよく知っている。でも、わたしの横手は、頭の中でまったく整理整頓されていないのだ。
でも、記事を読んで思った、そうそう、やっぱり横手の山は青い。今住んでいる町、神戸は夜が青いのだ。だから、わたしは青が好き。
山々に碧いインクを流しこむ
風の旅行記

戸田勝久さんの絵画展「風の旅行記」が、大丸心斎橋店であります。
と き 5月13日(水)→19日(火)
ところ 大丸心斎橋店南館8階美術画廊
どこにもない、でもどこかにありそうな、でもやっぱりないだろうなと思う、不思議で緻密な夢の景色と出会える。私は16日(土)の夕刻に行く予定、たぶん。
アレクセイと泉のはなし

「コリノズ」で、アイスミントチャイとホウレンソウのキッシュをランチがわりにいただいてきた。おいしくって静かで絵本がたくさんある書斎カフェ! そのうえ「くねる」2号もある!
きょう読んできたのは「アレクセイと泉のはなし」。
1986年4月26日のチェルノブイリ原発の爆発事故で被災したベラルーシ共和国のブジシチェを舞台にしたドキュメンタリー映画「アレクセイと泉」。それを絵本化したもので、放射能に汚染されたため、この地を去り、移住するようにいわれたのに、残って暮らしている55人の老人と1人の青年アレクセイたちの日常を描く。くらしの中心は、唯一放射能が検出されなかった泉。
この泉は奇跡なのさ
ほぼ自給自足のきびしい環境の中、人と動物の命の尊厳にあふれ、しごく真っ当。そう、放射能さえなければ最高の場所……。
水曜日のクルト

復刊が決まった「水曜日のクルト」。作者の大井三重子とは推理小説作家の仁木悦子のこと。透明感あるれるファンタジックな世界は、永遠に不滅です~。図書館で借りて読んでいたが、復刊がきまったというのでホントに楽しみ、やっと手元におけます。こんな童話が書けたらと思う。いたずらっ子でさみしがりやのクルトと画家、「めもあある美術館」の、失った日々の切なさにもキュンとする。
雨の水曜にぴったり!
達身寺花曼陀羅

「達身寺花曼陀羅」を読んだ。作者の中松弘子さんは、児童文学同人誌「花」でご一緒させていただいていた方。わたしの憧れの方でした。
しっとりした語り口で波乱万丈の楓の人生を描く。山に咲く花の凛とした美しさがある。挿絵の大橋良三の仏像の絵もまた素晴らしい。去年の子どもの日も雨だったこと思い出した。
木の中には仏さんが住んでおいでや (仏師のセリフ)
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2002年4月のWEB「@Rinの部屋」から再掲
●中松弘子「達身寺花曼荼羅」(文芸社)
花同人の本が出た。「花」2号から7号まで連載された達身寺を舞台にした花シリーズを纏めたもの。連載されていたときから平安時代の丹波の山奥を舞台にした人の悲しさと美しさを描いた作品世界に、うっとり。著者は長く短歌の勉強をしていて、磨かれた言葉づかいと端正な物語づくりで、すでに、完成された作品世界になっていた。合評会では、達身寺はどこにあるの、大黒さまって何、くろもじの花ってどんな花、と、質問攻めにし、また、一ファンとして、作品上のヒロインにあたる楓(ふう)に、あれやってこうしてと、やたらとリクエストをした。中松さんは、笑いながらも半分ほどは作品に反映してくれたかな。
今の出版界は、手軽なもの、派手なもの、壮絶なものが主流。地味な丹波の田舎の物語などは、どんなに優れた作品であっても日の目を見ないのではないか、と、勝手に心配していたのだけど、完結して6年たって本になった。日本画家による最高の挿絵つきで。う~ん。素晴らしい。うれしい。ファンとして小躍りして喜んでいる。
梅田に出る電車の中で読み出したら、物語を知っているのにも関わらずしっかりと入り込み、涙がポトリとこぼれてしまい、う~ん、中松さんには、まいるなぁ、と、笑ってしまい、完全に春の陽気にやられた人のようになっていた。
中松さんによると、偶然達身寺の近くを通りかかってお参りした時、8世紀建立で仏師達の養成所だったらしいとの言い伝えはあるが、来歴は不明ということを寺の人から教わり、ずらりと並んだ仏像を見て、「無名の仏師たちが彫ったであろう半ば朽ちた破損仏の姿に滅び行く美しさを感じた」という。この直後、ご自身にガンが発見され、告知を受けたあとの病院待合室で急に話を思いついて夢中でメモしたのが第1話の「木槿(むくげ)の花」という。病気との戦いつつ、病室のベッドで作品を紡ぐということを続けて、できあがった作品たち。ひとつひとつの作品を作るたびにお元気になられるようで、同人仲間として、物語づくりは人に生きる力をくれることを、まざまざと見ることができた。
それはさておき。作品は、丹波(兵庫県氷上郡)の達身寺の寺男三造による丹波言葉の一人語り。第1話「木槿の花」は、仏師見習のこんまい男の子丑が、一人前になる様子を寺男が語る。寺男の妻は目が不自由だが、手触りで仏像のよしあしを見る。心まで見るというくだりがあり、穏やかな口調でありながら心に響く語りが絶妙。滋味がある。丑は十一面観音菩薩を彫り上げた。第2話「せんぶりの花」は、ヒロインお楓さまの淡い恋と悲しい別れと尼藍婆を彫り上げる話。第3話は「くろもじの花」で、お上人様が地蔵菩薩を彫り上げる。第4話「山ざくらの花」では、語り手の寺男三造の半生、妻の乙名の半生が出てくる。三造は「若い時分は無茶しよりまして」という人間で、陰影が深く魅力的。乙名然り。第5話「かたかごの花」陰陽師の占いや楓の出生の秘密などが明かされる。深い苦悩と業を背負う三造の彫った聖観音が味わい深い。第6話「こぶしの花」には霊招きが登場。独特の世界がほのみえ、楓の未来が暗示されたところで終了。
三造から話を導き出す達身寺を訪れる男は僧職らしいが謎に充ちている。今でいうならライター業ではないかと思われるけれど、中松さんには、彼を主人公にした物語をリクエストしたい。
達身寺のかたかごの花(かたくり)は4月の群生が見事という。これは、ぜひ見に行かなくてはならない。
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